『ピンチをチャンスに -ミュージシャン亀田誠治の挑戦-』パイオニアセミナー開催レポート

イベント 2023/2/9

 

コロナ渦での日比谷音楽祭 

 

2020年度第2回開催に関しては、改善点なども踏まえてものすごく丁寧に組み立てていったんですが、 新型コロナウイルス感染拡大のため中止せざるを得なかった。日比谷音楽祭が開催される5月6月の時期には緊急事態宣言も出ていて、まずは人命が最優先だという判断でした。

 

2021年の日比谷音楽祭はもしかしたらリアルで開催出来るかもしれないという話もあったのですが、見通しが立たないからオンラインでも出来るようにバックアップを取っておこうということで、配信等の技術が進化して行く中、オンラインとオフラインの両方を本気でスタンバイしました。 

 

 

試せることは全部試そうと言うことで丁寧に準備をしていて、厳しい都立公園のレギュレーションの中でも会場によっては有観客でできますよとお墨付きを貰ってはいたんですけれども、一般の方も出入りするっていうことで感染症対策として網羅できない部分が出てくる。公園全体を使ってピースフル温かい空間を楽しむのが日比谷音楽祭だから、2021年は生配信のみですべて行おうと決めました。

 

その代わり生配信を最高の画質、最高の音質で届けようということで、配信チーム組成というものにそれこそ「全亀田」を投入して、今まで自分がフェスやライブ配信で関わっていただいている人たちのトップチームを集めて、「自分はこういう風にやりたい」と説明しながら、去年はオンラインの生配信のみで行いました。 

 

結局ね、人間って何か決断する時に他と比べるんですよね。他はやっているとか他はやめたとか。そういう風な基準でどうしても動きがちなんです。多分みなさんもそうだと思うんです、職場とか学校でもみんなやってるからやっていいんじゃないかって。

 

相対的な基準で判断するっていうのもすごく大事なことなんだけど、自分の絶対的な基準を持つということも大切で、僕が2020年度を開催中止にして2021年度をオンラインだけにした時、レギュレーションとしてはお客さんを入れて感染症対策全く問題ないっていうお墨付きはあった。でもコントロールできない事態が起こった時に、スタッフたちが一年半さまざまな対策を練って作り上げてきたものが後戻りしてしまうっていうことがあると「しょうがないな」じゃ済まないと思い、慎重に慎重を重ねた一番硬い安全なやり方、感染者を出さず、頑張っている人たちが他にもいる中でできる一番効率的なやり方、それを基準に去年はオンラインの生配信にしました。

 

 

コロナ禍における「音楽」とその先

 

(コロナ渦になって)2年半近くになりますよね。僕がそこで考えるのは、人と人との心の距離を縮めたいっていうのがあるんですよ。フィジカルディスタンスとかソーシャルディスタンスとか色んな言葉が飛び交っていく中で残っちゃったのは人と人との心の距離だと思っていて、僕はそれを「マインドディスタンス」と呼んでるんですけれど。

 

どこか人を信用できずに人間の攻撃的な部分が出て来ちゃうことが残念で、でも音楽があることによって人と人との心の距離を滑らかに繋いでいけるんじゃないのかなと思っている。だからこういう時代にこそ音楽を伝えていきたいんです。

 

人それぞれ好きな音楽があったり好きなアーティストがいたりするし、例えばスポーツの応援でも使われ、お祈りにも使われる。さまざまな場面で必ず音楽にはそういう役目がある。だから公園の中での開かれた音楽祭にトライしているし。

 

なんて言うんでしょうね、僕、この頃「ピース・オブ・マインド」って言葉を使うんですけど、「心の平安」って一番大事で、それを人間ひとりひとりが持てるような社会になってほしくて、それに一番近い距離にあるのが、もしかしたら音楽じゃないのかなと信じています。

 

「亀田さんは色んなことやってるね」と皆さん思ってらっしゃると思うんですけど、僕にとっては自分が演奏することもアーティストをプロデュースして一緒に作っていくことも、あるいはテレビに出ることもラジオに出ることも一つに繋がっていて、音楽のある日常、豊かな生活をとにかく多くの人に届けていきたいと思ってます。

 

いやいや、みんな音楽聴いてるのも知ってますよ。でも、みんなが知らない音楽の中にも本当に素晴らしい音楽がある。潜在的に音楽を聴く人口が増えることによって、より新しいものが生まれてくると思うんです。

 

ペストが流行った後ルネサンスが訪れた。ルネサンスっていうとダ・ヴィンチがいたりラファエロがいたりして、要するに科学や音楽などの文化が開花したんですよ。今我々が直面しているコロナ禍や、あるいは海外では信じがたい争いが起きていて大変な時代ではあるけれども、これを乗り越えて行くんですよ。乗り越えた暁にはきっとルネサンスが起こったように本当に人間が心の底から進化して、むっちゃくちゃみんな優しくなったね、みたいなことが、これからの時代に起きてくると思っていて、僕はそこを信じている。そういった願いは音楽を作る時にも込めています。

 

日比谷音楽祭については、サンクチュアリというか音楽の良心の集まった楽園にしたい。性善説じゃないですけれども、人間絶対にみんないいやつで、人を思いやる気持ちであったりとか優しい気持ちっていうのがあるっていう風に僕は思っていて、それが屈折してしまわないように、人々の心に届く音楽を作って人と人との距離をなくしていくことが自分の使命だと思っています。

 

 

 

 

音楽が社会に対して果たす役割とは

 

音楽って本当に不思議で、例えば楽器がなかったとしても太古の時代は物を叩いて音を出したり、声だけで歌を歌ってハーモニーを作ったりしていた。なんで音楽が人々の生活の中にこんなに溶け込むかってすごく簡単で、音楽自体が調和を求めてるんですよ。やっぱり大きい音と弱い音が混じったらうるさいでしょう。ということはどちらかのに音量を合わせていくことになる。音程が変なところで交わってもやっぱり気持ちの悪い和音になるので、ハーモニーを整えるためにみんなお互いに合わせようとするじゃないですか。

 

ハーモニーを綺麗にしたいっていうのは、自分がかっこよくなりたいとか、自分がいい思いをしたいからじゃなくて、鳴っているものを気持ち良くしたいからだと思うんですね。

 

そういういうことを考えるとね、音楽っていうのは、人間の持っている能力とかセンス、五感、六感の部分まで含めて本当に一番深い部分で関わっていて、人間の本能として自然に備わっているものなんじゃないのかなって思うんですよ。だからこそ、音楽がこの社会に対して果たせる役割はやっぱり共通言語なんですね。

 

英語やフランス語、言語が違っても音楽は存在するし、言葉がわからなくても音楽を楽しむことができるということで、何度も言ってますけれども、音楽は人と人とが繋がっていくために一番シンプルな役割を果たしてくれる仲間なんじゃないのかなって思います。

 

 

 

 

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