忙しい中での時間の管理の方法ですね、僕の時間の管理術みたいなものは実は雛形があって、まず早起きをすることです。5時か6時にもう起きちゃうんですね。朝は前の日の仕事が夜中一時までかかっても5時に起きます。なぜかというと、早く起きて人から邪魔が入る前に自分のやらなきゃいけないことを集中して終わらすので、「ピース・オブ・マインド」って言葉を使いましたけど、心の中に不安を残さないのがすごく大事で、今日とかも僕は全部やり切ってこちらの会場に来ているので、ここで果ててもいいみたいな感じです。
来るまでに不安な宿題はもう終わらせる。これはすごく大事で、マルチタスクといってもやっぱり不安要素があって、あまりに負荷の大きな問題が起きている場合、それを終わらせない限りは気持ちが必ずそっちに取られてしまうので、そういったことをなるだけ早く解決していくんです。自慢なんだけど、締切破った事ないです。絶対に間に合わせるんです。その為には逆算して準備を始めるんですよ。
あとこれは僕のタチですけれども、一つの仕事にずっと没頭しているよりも、同時進行でいろんなものが動いている方が応用が効くんですよ。僕自身は50人もいなくて影武者もいないんですけれど、いろんな人の力が僕に集まってくることによってその力に上手く乗ってるみたいな感じです。だから様々な意見を聞きながらそれをプラスに変換されていくように持っていけると、たくさんの仕事を同時進行で進めていけると思います。
スケジュール管理の仕方は、オフを何日か入れとくんですね。大抵そのオフは仕事になるんですけれども、その時に「休ませてくれよ、悔しい」じゃなくて、「空いててよかった、やりたい仕事ができる」っていうふうに思うんです。亀田誠治さんのスケジュールなんて真っ黒でしょう、とかって思われるけど意外と空けてあって、そういう日があるからこそ、もし何かがうまくいかなくて仕切り直しになってもリスケができる。とにかく自分だけの予定でコントロールできない世界に、もう30年間泳いできているので、柳のようにしなって、流されてはまたこう戻るみたいなイメージで仕事をしています。あと、いわゆる事務的なことやテクニカルなことはちゃんと人に任せていますね。
もう一個は思考の整理の仕方みたいなところですか。それはね、実は整理しきれなくて本当にいつも考えている。散歩してたらアイディアが降ってきたとか、シャワーを浴びていたらメロディーが浮かんできたとか僕の人生の中で一度もないです。
ずっと考えてて、たまに「これいけるかも」っていうのが出てくる。僕の大好きな作曲家バート・バカラックがおっしゃっていたんですけど、よく発想を変えるために気分転換が大事だと言われるけど、バカラックも気分転換のために二ヶ月三ヶ月休みをとって音楽から離れてみて、いざニューヨークに戻りピアノの前に向かったら何も出てこなかった。やっぱりいい曲を作るためには毎日うんうん唸ってそこに向かっていなきゃいけないんだっていうことをバカラックほどの偉人が言っているのを見て、思うところがあったんです。
でも凄く大事なこととして、いろんなことを同時進行にやっていて、一つ一つがじっくり考えられていない時もやっぱりあるからそういう時にはもう一回初めから調べたりアイディア出しをしたりする。あと、アイディアっていうのはとにかく人に言うことが大事で、人に言うと人からまた帰って来て、そこにヒントがあるので、僕は自分のアイディアはどんどん話しています。
僕もめちゃくちゃ不安になるんですよ。不安はまずその原因を取り除かない限り変わんないんですね。その不安の原因になっているものが何かっていうことを自分の中でちゃんと見極めるっていうのがすごく重要で、ただしこれも頭の中でだけで考えるとモヤモヤしちゃうから、やっぱり仲間や好きな人、波長の合う人に話すっていうのがすごく大切だと思います。
ぼくらの仕事でも「これはヤバイぞ」「トラブルの前兆かも」「もう僕は音楽業界でやっていけなくなるんじゃないの」みたいに思うことがあるけど、人に話してみると自分の妄想だったりもして、不安を抱えた時、誰かと共有してみると全然不安に思うことじゃなかったりするわけです。
本当に負荷がかかる場合は時期をずらせばいいんじゃないんですか。僕、受験の時に三ヶ月ベース弾かなかったですよ。受験勉強だけやりました。で、なんかやっぱり集中しなきゃいけないときっていうのはあるもんでですね。
人生の中で三か月とか一年とかってもうそんな期間は全く問題ないので、今一生懸命頑張ってることをまずやるべきで、それが一段落してから別のことを始めればいいし、あるいは同時進行とか全くありだから。
白黒つけなきゃいけないと思うと苦しくなっちゃうんだけどグラデーションがあると二つの融合みたいなことも出来るかもしれない。とにかく一生懸命やっていると見てくれてる人やそこでつながる人たちっていうのがいて、自分が想像していない能力を引き出してくれることによって、充実していくこともあるんじゃないのかなと思います。
一個に絞らなきゃいけない時っていうのはあります。でも絞ることは恥ずかしいことじゃないし、「あの時俺は頑張った」ぐらいの感じになればいいんじゃないでしょうか。
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