【特別対談】企業の競争力は、マーケターのナレッジの総和で決まる。B2Bの“体系”を組織の資産に変えるために(B2Bマーケティング総合講座)

未分類 2026/9/9

B2Bマーケティング総合講座 特別対談

株式会社マクニカ フィネッセ カンパニー マーケティング推進室 室長
中村 春香 様(第2期修了生)

早稲田大学 商学学術院 教授
守口 剛

シンフォニーマーケティング株式会社 代表取締役
庭山 一郎 氏

企業の競争力は、
マーケターのナレッジの総和で決まる。
——「個人任せの育成」を卒業し、B2Bの“体系”を組織の資産に変えるために

2024年10月に開講し、受講者から学びの成果を実感した声や実務での活用につながったという声が多く寄せられている早稲田大学の社会人向け教育プログラム「B2Bマーケティング総合講座」。2026年10月には第3期が開講します。

そこで今回は、第2期を修了され、現在は株式会社マクニカ フィネッセ カンパニー マーケティング推進室 室長として人材育成にも携わる中村春香様、本講座を統括する守口剛教授、講座の企画協力、また講師を務めるシンフォニーマーケティング株式会社代表の庭山一郎氏にお集まりいただきました。

実際に学んだ立場と、組織として人材を育成・送り出す立場の双方を持つ中村様の視点も交えながら、「なぜいま、B2Bマーケティング人材の育成が経営課題なのか」、そして、いま学ぶべき理由について語り合いました。

MAを操作できても、マーケティングができるわけではない

庭山氏: マーケティングオートメーション(MA)の導入企業は、各ベンダーの販売実績を足し込むと累計2万社を超えています。ところが、本来のマーケティングの定義に照らして「導入成功」と言える企業は5%もありません。残りの95%は、実質的にメール配信しかしていません。

なぜこうなるのか?MAを操作できることと、MAを使って受注に貢献する優れたマーケティングができることは、まったく別の能力だからです。ここがB2B企業に理解されていない。ツールを買えば操作はすぐ覚えられますが、マーケティングができるようになるわけではありません。これはナレッジの問題です。だからMAやSFA、CRM、CDPの操作を教えても解決しない。マーケティングそのものを学ばなければいけないんです。

守口: 私自身、長くマーケティング戦略と消費者行動を研究してきましたが、対象はほぼB2Cでした。周囲の研究者も同様です。一方で、2022年から日本橋で「早稲田マーケティングカレッジ」を始め、庭山さんにも当初から参画いただく中で、B2Bマーケティングの重要性をあらためて痛感しました。

企業の中でB2Bマーケティングに携わっている人はきわめて多いにもかかわらず、教育の提供が一律に不足している。この大きなギャップを何とかして緩和したい。そう考えて、本格的なB2Bマーケティングを学ぶ場として、この講座を立ち上げました。

「一連の流れを、置いておいたまま走っていた」

中村様: 弊社は半導体とサイバーセキュリティの事業領域をコアとして成長してきましたが、現在は2030年にサービス・ソリューションカンパニーになるというビジョンを掲げ、新規事業としてCPSソリューション事業を推進しており、私自身も新規事業に携わる部署にいます。

事業成長に貢献したいと思う一方で、もともとエンジニアだったこともあり体系的にマーケティングを学んだ経験がなく、日々スポットで施策を改善することに追われているという感覚がありました。「本当にこれでいいのか?」という疑問が、当講座受講の出発点です。

この講座を受講した決め手は、B2Bならではのマーケティングを体系的に学べる場が、探してもほとんどなかったことです。スポットのセミナーやB2C向けの講座は多いのですが、理論から実務まで通して学べるものは他にありませんでした。それに社内でB2Bマーケティングに携わっている者から「早稲田の講座はいいよ」と勧められたことも大きかったですね。

受講して最初に気づいたのは、「STPをはじめとするマーケティングの用語は知っていたけれど、手元で取り組んでいる施策に追われて“マーケティングとしての一連の流れ”を横に置いたまま走っていた」ということでした。顧客への価値定義、STPの整理、営業との連携など——それぞれを個別に考えるのではなく、一連の流れとして捉えることが大切なのだと気づくとともに、B2Bマーケティングを体系的に学ぶ意味を実感しました。

手法から入る人が陥る「落とし穴」

守口: 手法から入ることの落とし穴はいくつかあります。まず、いま有効な手法も、技術の進展で状況が変われば通用しなくなる。次に、手法は独立して存在するものではなく、目的があって初めて選ばれるものだということです。認知を上げたいのか、製品の特徴を理解してもらいたいのか。目的が変わればそれに適した手法も変わっていきます。

さらに重要なのは、手法間の有機的な連動です。ある手法に特化した担当者であっても、全体の連動を理解していなければ、変化には対応ができません。マーケティングの目的の上には経営上の目的がある。この「目的の連鎖」を体系的に理解した上で手法を運用する姿勢こそが本質だと思います。

庭山氏: B2Bビジネスの現場に伺うと「良い製品なのに売れない」とよく言われます。しかし、「誰にとって良いのですか」と聞くと、前バージョンと比べてや、競合との比較の話が出てくる。でも良い悪いを決めるのは、唯一マーケットです。残念なのは「ターゲットセグメントはどこですか」と尋ねると、誰も考えていないし、答えられないことが多い。

先ほどの例でいえば、STPは多くの人が知っているんです。概念として読んだことはある。でも、自分が担当する製品を実際にセグメントし、勝てるセグメントを見つけ、そこにポジショニングを合わせることができない。この“真ん中が抜けている”状態が、今いちばんの問題です。バリュープロポジションの議論も、私に言わせれば唯一の目的はターゲットセグメントを見つけることです。自分たちのバリューを最も強く求めてくれる相手こそ、勝てるセグメントなのですから。

体系的な知識を持つと、展示会の予算が「通る」

庭山氏: B2Bマーケティングに関する体系的な学びは、実は日々の実務でこそ効きます。B2Bマーケティングで大きな予算を投じる施策の一つが展示会ですが、「これだけ使っていくらの売上に貢献したのか」と叩かれがちです。名刺を何枚集めたとか、隣よりブースが格好良かったとか、そんな話で経営者を説得できるわけがない。

でもB2Bマーケティングに関する体系的な知識があれば説明が可能になります。「我々のターゲットは具体的にこの25社です。そのターゲットのデータを獲得するコスト=CPTL(Cost per Target Lead)は3万2千円。CPLは8千円ですが、この3万円には価値がある。我々の営業が会えない人に会えるからです」と。こう説明できれば、翌年の予算はちゃんと確保できます。ウェビナーもWebも同じです。「先月のユニークユーザー28,000人のうち、ターゲットアカウント所属が185名、ターゲット部署と思しき方が58名・・・」——これで話が通る。これらは体系的な知識に基づくSTPの設定ができてはじめて言えることだと思います。

守口: 本講座のPBL(プロジェクト学習)科目が実務に有効なのも同じ理由です。PBLグループで実際の企業課題に取り組むと、手法から入って「こう解決しました」という結論にはまずならない。必然的に大元から体系的に考え、最後に手法へ降りていく。PBLを通じてマーケティングを俯瞰して捉え、その考え方を自分の実務に置き換えてみることで、日々取り組んでいる仕事を全体像の中で捉え直す機会にもなります。

中村様: 私のチームは営業、経営企画、マーケティングと立場も業界もバラバラで、物事の見方の違いが本当に勉強になりました。同時に、マーケティング組織のあり方、営業との連携、顧客への価値定義といった悩みは業界や職種を問わず共通だと知れたことも大きかったです。講座が終わった今も、自社で自分の担当製品について「お客様にとってこの価値は何か」をチーム全員で立ち返って議論しています。

「マーケティングの基礎は、ビジネスの基礎」

中村様: 社内の人材育成の難しさは、B2Bマーケティングの領域が広く、どうしても実務にフォーカスしがちで、体系的に学ぶことや時間を個人任せにしてしまう点です。結果として育成が個人の経験や思いに依存し、組織に知見が蓄積されない。

庭山氏: 弊社ではマーケティングスキルを偏差値で測るアセスメントを提供していて、利用者は1万人規模になりました。分析すると面白いことがわかります。偏差値の差が10ある部門同士のミーティングはほとんど成果が出ない。15差あるとほぼ喧嘩になる(笑)。片方の言葉がもう片方に通じないからです。

つまり正解は、マーケターが営業や経営に合わせて易しい言葉で話すことではありません。マーケティングの基礎はビジネスの基礎。だから経営層やものづくり、営業側の偏差値も上げるべきなんです。実際、平均が60になると会議が驚くほど生産的になる。営業から「去年のCPTLはいくらだった?」と突っ込みが入るようになります。

中村様: だから私は、部下だけでなく上司にも、営業にも、経営者にもこの講座を受けてほしいと思っています。B2Bに関わっている人は、絶対に知っておいたほうがいい内容です。

AI時代に、なぜ「リアルな場」の価値が上がるのか

守口: 生成AIを使わない選択肢はもうありません。アイデアの壁打ち、情報収集、広告クリエイティブの作成や評価、AIサンプルによる調査シミュレーションまで活用が広がっています。ただ流れが速く、今日の正解が明日の正解ではないケースも多々ある。個々人がバラバラに工夫するのではなく、企業全体としてAIの組み込み方を固め、かつフレキシブルに更新し続ける体制が求められます。

一方で、AIは日本にとって追い風でもあります。かつては英語力が情報量の差を生みましたが、いまその差はほとんどなくなりました。日本語で世界の知見にアクセスできる。これは大きいですよね。

庭山氏: 私は、AIは「増幅器」だと考えています。お寺の鐘のようなもので、小さく叩けば小さく鳴り、大きく叩けば大きく鳴る。その「叩く力」が、B2Bマーケティングに関するナレッジです。日本と欧米では、すでにその蓄積に差がある。同じAIを使ったとしても、土台となるマーケティングの知識や理解に差があれば、得られる成果の差もそのまま広がっていきます。

だからこそ、AIは日本企業が一気に追いつくチャンスにもなります。一方で、B2Bマーケティングのナレッジに差があるままAIを使えば、その差がさらに広がってしまう可能性もある。正直に言えば、私は後者になる可能性の方が大きいと危機感を持っています。日本のB2Bマーケターのナレッジを上げないと間に合わない。この講座に本気で取り組んでいる理由です。

中村様: 実務ではメールやコンテンツ、画像作成でAIをフル活用していて、試行回数は圧倒的に増えました。ただ同時に、AIが検索の入口になりSEOやインサイドセールスの効きが落ちる一方で、リアルなお客様向けセミナーの集客が大きく伸びていることを肌で感じています。

講座で学んだコミュニティマーケティングを自分の担当製品に応用し始めたところ、お客様同士で情報交換が生まれ、「AIに聞いても返ってこない」顧客インサイトが集まるようになりました。ネットに載っていない、話して初めてわかる情報です。AIが台頭した今こそ、コミュニケーション力や人間力が求められている——少し不思議ですが、そう実感しています。

庭山氏: インターネット以前、パソコン通信の研究で「オンラインで繋がれば繋がるほど、実は飲み会が増えた」という結果がありましたね。面白い人、詳しい人だと知れば、人は会いたくなる。AIの時代も同じでしょうね。だからこの講座のようなリアルな場はとても重要です。

迷っている方、そして送り出す立場の方へ

守口: 受講を迷うのは当然です。そして受講したからといって悩みがなくなるわけでもありません。ただ、B2Bマーケティングに携わる方々の悩みには共通点が多い。同じ立場の人と悩みを共有し、ヒントを与え合える場を持てることは、修了後にこそ効いてきます。そのベースができるのが本講座です。

庭山氏: この講座には、マーケティングのアカデミアの研究者、我々のようにマーケティングを生業とする実務家、そして事業会社で実績を上げてきたマーケターが講師として揃っています。参加者はほぼ全員が事業会社側で、テーマはすべてB2B。この構成は、おそらく日本でここ、早稲田だけです。修了後も続くネットワークがあり、定期的に集まっている修了生も少なくありません。参加する意味は本当にあります。

中村様: 迷っている時点で、すでに何かしらの悩みを抱えているはずです。この講座は一歩外から、引いた目線で自分の業務を見直せる機会になります。社外に出て、同じ悩みを持つ方と情報交換し、新しい気づきを得る場は、マーケターにとって必須だと思います。B2Bマーケティングを学ぶなら、理論から実践まで体系的に学べるこの講座が一番おすすめです。

B2Bマーケティング総合講座について

B2Bマーケティングに必要な理論や先端的な手法を、講義、実務事例、ワークショップ、PBLを通じて体系的に学ぶ、早稲田大学の社会人向け教育プログラムです。

B2Bマーケティング総合講座の詳細・お申込みはこちら

2026年度 第3期 受講申込受付中

募集締切:2026年10月13日(火)23:59
開講期間:2026年10月21日(水)~2027年3月11日(木)
実施場所:早稲田大学日本橋キャンパス
受講料:462,000円(税込)