「守る」から「攻める」伝統産業。「競争」ではなく「共創」を・パイオニアセミナー開催レポート

イベント 2022/2/25

 

続けること、諦めないこと、仕事を楽しむこと

 

最後なんですけど、変わらないことがあるんです。これ何かっていうと、自分がずっと歩んできた35年のポリシーなんですね。

続けること、諦めないことですね。これは絶対大事だと思います。僕自身もずっと諦めずにやってきたんですね。さっき言ったように足蹴にされた企業だったのに、30数年かかって今、どんどん若い人が就職してくるようになったってこともそうだと思うんですね。
途中で断念していたらこうはならなかったということなので、もちろん続けること、諦めないこと。これが1番大事だと思っています。

 

それから仕事を楽しむこと。これは当たり前なんですけどね。仕事は楽しくなかったら絶対に発展はありえませんよね。僕は仕事好きなんですよ。今はもう歳をとったんであんまりできないんですが、若いときは朝5時に会社に来て、夜11時にうちに帰っていました。今でも自慢できるのは、一年間のうち364.5日働いた年もあります。だから元日の半日だけ休んであと全部仕事をしたんです。なんでそんなに仕事したかっていうと答えは簡単です。楽しかったからです。だからやっぱり楽しむってことが大事なんですね。

 

失敗したことを忘れる

 

もう1つが、よく皆さん良いことをいっぱい言うんですけど、実行する人は少ないんですね。なぜかっていうと失敗を恐れるからなんですよ。僕の場合はいろんなことがありますので、失敗もたくさんあるんですけど、失敗したらどうするかっていうと忘れることにしてるんですね。

 

失敗した経験を無くしてしまえば、新しいチャレンジがどんどんできるんですよ。だからね、成功も失敗も悪いことじゃないんですね。1番悪いのは何もしないことなんですね。

やはりそういう意味では、仕事を楽しんでやるっていうことが一番会社が発展する大元だというふうに思っています。

 

 

PRする側でなく、PRされる側になる

 

それから、地域社会に対して貢献することですね。これは非常に大事なことだと思っていて、うちの会社も地域社会に対してはいろいろやってるんですよ。何よりありがたいのは、富山県民が県外に行く時にうちのビアカップとかぐい呑とか色々と県外に持って行ってくれて「これは富山県の高岡の能作っていう会社が作ったものだ」ってPRしてくれるわけなんですね、うちの会社はほとんど営業はしてない会社なんですけども、ある意味、富山県民がPRしてくれるんです。

 

なんでそうしてくれるかっていうと、地域にとっては大事な会社だと思ってもらえているからですね。その裏には地域に対する貢献が必要だと思ってます。よく県外で講演してこの話をすると、ちゃんと法人税とか住民税払ってるんですかっていうんですけど、それは当たり前なんですね。その当たり前じゃないことをやることが、やっぱり地域貢献であり、会社にとっては必要なことだと思ってます。

 

 

質疑応答

 

Q.ご自身の経験からマーケターが競争する上で何かアドバイスがあれば教えていただきたいです。

 

A.争う競争っていうのは絶対しないでおこうと思ってて、逆に共に創る共創とか共に想う共想とかこっちを主に考えています。

 

うちは錫製品をやっていると競合する会社があるんですけど、実はめちゃくちゃ仲が良くてですね。お互い連携しながら技術のやりとりとかしてるんです。なんでこんなことが起きたかっていうと、そこの社長から電話があって、能作さんがテレビやメディアにどんどん出て、錫のPRしてくれるもんだからうちの売り上げが伸びたっていう。それ以来いろいろと情報交換しているような具合もありますし、そういった意味で敵を作らない。

 

だから、問屋さんを飛び越えて製品開発をしたというのもあって、問屋さんには迷惑をかけられないと思ったもんですから、あえて営業はしないと。あとは取引先ができたら高岡の問屋さんと付き合いがあるかどうか聞くんですよ。なければやりましょうっていうスタンスで。

 

それでもいろいろ言われるんですよ、でも僕にしたら絶対に裏抜けないって自信がありますから、何を言われても平気だよっていう。自分の自信があればバイアスにこだわることもないと思うんです。ポジティブな方なのでネガティブなことは考えてないですね。

 

 

Q.社会や企業に対するレガシー、後継者や次の時代に希望することは何でしょうか。

 

A.コロナ禍でかなり考え方も変わってきたんですけど、最近M&Aがすごく多くなってきてますよね。例えばうちは鋳物を作ってる会社なんだけど、もうそこに留まらなくて当たり前の世界になってきたっていう感覚はすごくします。なので多角的に物事を捉えていくのがこれから大事なことかなと思います。

 

だから、既成概念にとらわれず自由にやってくべき時代が来たなと。逆に言えばそうしてやりやすくなったんだなあっていう感じはしてます。やっぱり1つの事業で何百年続けることっていうのはないと思うんですよね。その時代に応じて変わっていくことも企業としても大事だと思うので、そこはあんまり固執してないんですよ。

 

 

Q.能作社長の今の夢は何ですか?

 

A.夢はたくさんあるんですけど、最後の仕事は日本の工芸を元気にするってことを目標にしてます。

当面の目的としては2025年の万博ですね。パビリオンができないかっていうことで、今ちょっと骨を折ってみようと思ってるんですね。実は日本の工芸はね、どっちかと言えば海外の方がウケがいいんですよね。だからやっぱり万博は大事だし、実は1925年のパリ万博で、日本の工芸がいっぱい紹介されて、輸出がどんどん増えたという経緯があるんです。次は2025年だからだからちょうど100年目になるんですよね。ここは1つの節目かなと思っていろいろ考えてます。

 

人生の価値ってあるじゃないですか。100年間の人生の中で何人の人を幸せにできたかっていうのが一番大事だと思ってるんですね。そういう意味で医療機器は究極の道具でして、人の痛みを和らげる、あるいは潤いを与えるとか、喜びを与えるとかっていうことが重要だと思っているので作っているんです。

そういった方向でも日本の工芸っていう切り口をなんとかしたいなっていう思いがあります。

 

経営者としても、また一人の人間の人生の在り方としても、根本的な大切さに気付かされるお話でした。これからも地域や人との繋がりを大切にしながら、伝統産業を盛り上げ日本のみならず海外へも多くの幸せを届けてくれることと思います。

是非、実際に『能作』の製品を手に取って、メッセージを感じ取ってみてはいかがでしょうか。

 

※パイオニアセミナーは年間通じ、定期的に開催しています。詳細は、こちらをチェックしてください。

 

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