『Jリーグ村井満チェアマンの経営哲学』パイオニアセミナー開催レポート

イベント 2022/4/5

欧州から学ぶオーナーシップ②:独学の勧め

 

ドイツのトレーニングに魅せられた私は、もっともっと深く入っていきました。すると面白い局面に出会うことになりました。

 

ある時、U-17ワールドカップの本大会でのドイツ代表の宿舎の風景の映像を見る機会がありました。今日のメニュー、行動予定表に、全体ミーティング、ポジション別ミーティングと書かれており、その下に「数学」が入っています。そして、その下にまたフィジカルトレーニング、ストレッチ、全体ミーティング、ポジション別ミーティング、「地理」と書かれている。

 

「「数学」とか「地理」って何ですか、補講ですか、落ちこぼれの対策ですか」、と聞いたところ、「そうじゃない、サッカーが強くなるために必要なんだ」と言われました。

 

数学の先生がほぼマンツーマンで導関数をやっていました。例えば「この2つの関係の因果関係なんだと思いますか」「この図形に共通するものはなんだと思います?」というようなことを、数学の授業を使いながら、考えるトレーニングや観察するトレーニングを行っています。

 

サッカーを上手くなるために数学が必要だということまで、私も到底思いがいかなかったのですが、自立した選手がぐるぐるとリバウンドメンタリティーという傾聴トレーニングや考えるトレーニングを行ったことの延長線上にドイツは7点を打ち込んだのです

 

 

先ほどお話したワールドカップで、ドイツに対して、ブラジルはフォーメーションを変えていきました。ドイツは、変えてきたことを瞬時に感じ取って、今度はまた逆の手を打ってきます。観察しながら対応していく力。これがドイツのサッカーでした。

 

そういう意味では、我々にはまだまだ伸びしろがあると思っています。

 

2018年にロシアワールドカップで、イングランドはベスト4に入りました。その前年のU-17のワールドカップ、それからU-20のワールドカップ、両方のワールドカップでイングランドは優勝しました。

 

イングランドで何があったのかと追いかけていったところ、テリーとアダムという2人の男に出会いました。このテリーとアダムは、育成システムを徹底的に強化していく体制をイングランドで作り上げ、実は先ほどのベルギーのフットパスを初期に作った人でもありました。

 

私はロンドンに飛び、ロンドンのカフェで日本に来てくれとお願いしました。日本には、高校や大学があり、いわゆるサッカーをやるところは(クラブだけでなく)複合的にあるので、(ヨーロッパの型ではなく)日本に来て(ハンズオンで)育成システムを作ってくれと口説き倒し、2019年から日本に来てくれることになりました。

 

今3年経ちました。Jリーグの育成改革はものすごく進んでいます。今まだ育成段階なので表に出ませんが、2030年にはどうなるだろうと思います。私のイメージだと、大谷翔平選手や八村塁選手が各クラブにいるような感じでしょうか。

 

そのような状況になれば、Jリーグは必ず繁栄すると信じています。ですから、いきなりJリーグをいい形にするよりも、少し先の長い話なんですけれども、選手育成をしっかりやると言うようなことがオーナーシップです。

 

ひとりで学ぶ、誰かに教えてもらうのではなくて、自ら学ぶ。こういうようなことを、もっともっと推し進めて行きたいと考えています。

 

 

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