「これはちょっとまずいぞ」ということ、たとえばクラブの監督がパワーハラスメントらしきことをやったみたいだけど、これはJリーグにとって不都合だから箝口令にしておくとか、役員、Jリーグ限りにしておこうとしても、それでは翌日、大体がスポーツ新聞に記事として出ています。2ちゃんねるにも出ています。
サッカーは年間1,000万人くらいが観戦する競技です。そういう意味ではみんなのものですので、情報を隠そうとしたり、コントロールしようとしたりすると、むしろ致命傷になるのです。
引き出しに魚を入れてしばらく置いておくと腐ってしまいますが、天日に晒してお天道様に晒しておけば、日持ちが良くなります。このように、Jリーグは徹底的に情報を天日干しにする、と言っています。
こちらは、2020年の2月から数えてメディア会見をした回数です。71回、メディア会見をしました。
Jリーグでは2020年3月からオンラインで会見をやっていき、完全に情報を天日に干しています。
Jリーグが入っているオフィス、JFAハウスには、3階に記者クラブのオフィスがあり、五大新聞や大手のスポーツ新聞の記者30人くらいが常駐して詰めています。
通常、何かあればチェアマンは3階に降りていって、(記者クラブの記者に対し)会見をすればよかったのですが、オンライン会見をした場合、人数制限がありませんので、北海道新聞から琉球新報まで毎回100人を超え、多い時で300人くらい参加してきます。相当ビビりますが、情報を天日にさらすと考えていますので、会見を徹底してやりました。
メディアの真ん中にさらされて、「今ここまではわかっているけど、ここまではわかりません。ここまでは対策ができていますが、ここからは先のプランです」のようなことを話していくうちに面白いことが見えてきました。
「村井さん、そういうことを聞いてるのではなく、国民が心配してるのはこういう事だよ」と記者の方に言われると、「なるほど、そちらがテーマなんだ!そちらの対策をとればいいんですね。わかりました」と感じたり、「だったら村井さん、こういう人に聞いた方がいいよ」という話が出て、その人にインタビューをして情報をもらったり。
天日にさらすことによって日持ちが良くなるどころか、アイディアももらえましたし、世の中の関心はどこにあるかまでわかってくるようになりました。
そういった意味で、魚と組織は天日にさらすと日持ちが良くなる。これはとても大事なことです。
実はJリーグ57クラブは360度評価と称して、無記名でチェアマンのリーダーシップを評価します。それから従業員、私の部下23人の部長・本部長も、無記名でチェアマンの職務遂行能力や経営力を容赦なく評価します。
しかも、それを社会の素点と比較し、様々ありとあらゆる手段を使って、Jリーグのリーダーは天日に干されます。でも、その方が強くなるんです。
今、次のチェアマン選考を選考委員会が行っていますが、大概多くのパターンは選考委員会に現職のチェアマンが入ったりするわけです。
そうすると現職のチェアマンへの文句は言いづらいじゃないですか。また選考委員会に私が行かなくても、選考委員をJリーグから出したりすると、忖度があって言いたいことが言えない。よって、選考委員会にはJリーグの役職員は一切入っていません。
本当に組織が成長するときは、容赦なく今のチェアマンのこれがダメだということをみんなで言って、それではそれを超えるチェアマンはどんな者だという議論をし、リーダーを選んでいく。
このように、リーダーの選び方そのものにも、天日干しポリシーを埋め込んでいます。