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未来のシナリオを創る、人を動かす方法論 ~1. What to say:人の行動をシフトさせる、コピーライティングの基本

みらいブレンディピティ 2017/12/20

事業創造リーダーに必須の、未来のシナリオから事業を創造する「スペキュラティブ・デザイン」、未来を“見せ”て人を動かす「ビジョナリーワード」とは。

 

本稿は、12/13(火)に実施されたWASEDA NEO講師 各務太郎氏のセミナーより、一部抜粋して記事化したものです。

 

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起業や新規事業立案の際に重要になるのが、ビジョンを言語化すること(「ビジョナリーワード」)と “好ましい未来”からの逆算の思考法(「スペキュラティブデザイン」)を駆使することです。この2つが、資金調達と事業成功の鍵を握っているといっても過言ではありません。では「ビジョナリーワード」と「スペキュラティブデザイン」とは何なのか。この講義で解説してきます。

 

コピーライティングの基本

 

まず、「ビジョナリーワード」とは、広告のキャッチコピーの延長にあるものです。起業の際には、人を動かすメッセージが必要です。これから、そのメッセージの作り方を話しますが、ビジョナリーワードの前に、キャッチコピーの作り方をお話させていただきます。

 

かつて某広告代理店の学生向けインターンシップで出された課題で伝説的な案が2つ出てきたと言われています。課題は「パンダのキャッチコピーを考えてください」というもの。ひとつの案は「神様がくれたぬいぐるみ」、もうひとつは、「パンダの尻尾は黒でしょうか?白でしょうか?」。前者はパンダの見た目を表現したにすぎませんが、後者は人を動かす力があります。なぜかというと、実は自分が知らないことに気づき、興味をそそられるからです。

 

キャッチコピーには、知らなかったものを知りたいと思わせたり、Aという印象を持っていたものをBに変えたりする役割があります。これを、広告においては「シフト」と呼んでいます。

 

キャッチコピーの目的は、このシフトを起こすこと、あるいは、アクションを起こさせることです。「知りたい」と思わせ、そして「買いたい」と思わせることなのです。キャッチコピーというと、ポエムとかダジャレを考えようとする人も多いですが、あくまでアクションを起こさせるためのものです。

 

さて、プロのコピーライターがコピーを考える際、必ず次の二つのことを基本にしています。

 

1、What to say.(何を言うか)

2、How to say.(どう言うか)

 

まずは1の「What to say」から考えていきます。

 

たとえば「リンゴの売り上げをあげるキャッチコピーを買いてください」というミッションがあるとします。その際、プロのコピーライターは、いきなりキャッチコピーを書くのではなくて、「リンゴは●●である」と表現するところから始めます。

 

この「●●である」は、単純に主語(S)と述語(V)で構いません。「リンゴは甘い」「リンゴは赤い」「リンゴは丸い」でもいいです。これを続けて「リンゴは肌にいい」という事実が見つかったとしましょう。リンゴには何らかの栄養素があって肌にいいと決まると、実はリンゴの競合はミカンやモモなどの他の果物ではなくて、むしろ化粧品になるかもしれません。すると、リンゴを化粧品棚に置いてみようか、という仮説が成立します。このように、何を言うか、つまりコアメッセージが決まることで、キャンペーン全体や予算をどこにつぎこむかまで決まってしまうのです。しかも、A社が「リンゴは甘い」、B 社が「リンゴは赤い」と言っているときに自分だけ「リンゴは肌にいい」と言えれば、ブルーオーシャンを作り出すことができます。

 

コピーを書くときは、まだ誰も言っていないことを言わなければいけません。ここが一番重要であり、難しい部分になります。

 

まだ誰も言っていないことを発見するコツは、競合を見ることです。「ふじ」や「ジョナゴールド」など、他の種類のリンゴを見るのではなくて、例えば、化粧品を競合に見立てられるかがキモになるのです。

 

次に「How to say」を考えていきます。

 

「How to say」の例として、ある動画があります。

 

この動画は、最初に盲目の男性が「I’m blind. Please help.(私は目が見えません、助けてください)」というボードを持って街角に座って、お金を集めています。彼ははじめまったくお金を集められないのですが、女性がやってきてボードの文言を書き換えます。すると、途端に道行く人がどんどん彼のもとにお金をおいていくようになるのです。

 

彼女はどのように書き換えたか見てみましょう。「It’s a beautiful day, and I can’t see it. (今日は素晴らしい日です。でも私には見えません)」。盲目の男性も、彼女も、伝えようとしているのは、目が見えない、ということです。意味は同じですが、表現が違うのです。

 

男性が最初に書いていた「目が見えない」や「助けてください」という表現を、広告では「恐怖訴求」と呼んでいます。「タバコを吸い続けると健康に害が及ぶかもしれない」と言うのと同じで、脅し文句や、否定的な表現を使うことをさします。

 

しかし女性が書き直した言葉は、ポジティブな言葉から始まっている。すると印象が変わります。コピーライターは意識的に恐怖訴求を避けています。

 

「What to say」と「How to say」について解説してきましたが、重要なのは圧倒的に「What to say」です。一般的には「How to say」がコピーライターの真骨頂と思われがちですが、これはコピーを作るプロセスの最後の数%にすぎません。

 

この動画の例で言うと、盲目の男性は街に一人しかいないから、言い方を変えるだけでお金が集まるようになりました。しかし、盲目の男性が10人並んでいたら、言い方を変えただけではお金は集められません。つまり、どのようにしてブルーオーシャンを探し出し、そこに身を置くかが重要なのです。そのためには、「How to say」より「What to say」を考えなくてはいけないのです。

 

改めて、キャッチコピーとは何かをまとめます。

 

1、コピーは「シフト」を起こすための道具

2、「どう言うか」より「何を言うか」

 

重要なのは、その言葉に戦略があるか、すなわち、競合を誰におくかです。言い換えると、みんながリンゴを「甘い」と言っているときに、自分も「甘い」と言っていたり、「甘い」を言い換えたりしているだけでは戦略を立てたことにならない、ということです。しかし、「肌にいい」が言えれば、並ぶ商品棚さえ変えることができるのです。

 

 

◆スペキュラティブ・デザインの方法論を用いた「課題創出型ビジネスデザイン」プログラム(みらいブレンディピティ)概要

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◆【1/6(土)限定開催】スペキュラティブ・デザイン講義(実践編)

http://speculadipity.peatix.com

 

◆講師プロフィール
各務 太郎(株式会社SEN代表・建築家・コピーライター)
早稲田大学理工学部建築学科卒業後、電通入社。コピーライター/CMプランナーとして数々のCM企画を担当。電通を退社後、2017年ハーバード大学デザイン大学院都市デザイン学修士課程修了。第30回読売広告大賞最優秀賞。第4回大東建託主催賃貸住宅コンペ受賞。他多数。

 

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