未来のシナリオを創る、人を動かす方法論 ~2. Visionary Word -「人を動かす言葉」の作り方

みらいブレンディピティ 2017/12/20

誰もが同じ未来を思い浮かべられ、自律的に動けるようになるビジョナリーワードの創り方。

 

本稿は、12/13(火)に実施されたWASEDA NEO講師 各務太郎氏のセミナーより、一部抜粋して記事化したものです。

 

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人を動かす「ビジョナリーワード」

 

次に、「ビジョナリーワード」の考え方に入ります。ビジョナリーワードは、言い換えると「頭に絵が浮かぶ言葉」のことです。

 

自分が起業する場合や新規事業を立ち上げる際には、まずこのビジョナリーワードを考えなくてはいけません。なぜこれが起業や新規事業のときに大事なのでしょうか。

 

たとえばグーグルというサービスが存在しないときに、グーグルの創始者は、それがどのようなものか具体例を見せることができません。まだ何もない状況で、言葉だけで投資家などを説得して資金集めをしなければいけない。その際に、グーグルがどのようなものなのかの青写真を共有して説得しなくてはいけません。この青写真を描かせる力があるか否かが、事業の成功のキモなのです。成功している経営者はみんな、言葉がシャープでわかりやすいという特徴があります。

 

ビジョナリーワードに必須の3要素

 

1.「解像度」

解像度とは、はっきりとしているか、ぼやけているか、ということです。例えば「みんなに優しい」という言葉は何も言っていないのと一緒です。このように曖昧で抽象的な言葉は、解像度が低いと言うことができます。

 

2.「目的地までの距離」

たとえば、100年後に火星まで行けるようになる、と言われても、あまりにも先のことすぎて、今すぐにアクションを起こそうという気にはなりません。しかし、富士山の頂上を目指しているときに「五合目まで来た」と言われれば、あと少しで頂上だからがんばろう、という気がおこってくるものです。

 

3.「風景の魅力」

これは、そもそも達成された後の風景が、本当に魅力的かどうか、ということです。

 

10年以内に、人類を月に送り込む。

 

これは、ジョン・F・ケネディが選挙で勝つために使った言葉です。「10年以内」という具体的な期間と「月に送り込む」というビジョンは、誰でもすぐに思い描くことができます。「月に送り込む」という言葉は、「宇宙開発」よりも具体的であり、10年以内に実現するためには、そこから逆算して何をどのように進めるかを想像できます。つまり、この言葉に基づき、エンジニアが自ら動けるようになります。

 

このように、コピーは、上司が部下をマネジメント、コントロールする言葉として使えます。自分が細かい指示を出さなくても、みんなが同じ絵を描ける言葉を言うことによって、みんなが思い通りに動いてくれる。だからこそ、ビジョナリーワードが重要になるのです。

 

ここで重要なのは、必ずどれも数字か固有名詞が入っていることです。数字と固有名詞は、誰が聞いても同じイメージを共有することができます。聞いた人に同じ絵を思い浮かばせるビジョナリーワードには、この二つが欠かせません。

 

ビジョナリーワードを作る4ステップ

 

STEP1 現状を疑う

STEP2 未来を探る

STEP3 言葉をつくる

STEP4 計画を立てる

 

それぞれのステップを、パーソナルコンピューターの例で解説してきます。ビル・ゲイツが「パーソナルコンピューター」という言葉を発した当時、コンピューターは家庭に置けないくらい巨大な機械でした。STEP1は、コンピューターは大きすぎるという現状に対して、「本当にそう?」という疑いを持つということです。STEP2では、もしも小さくできたらどうなるかを考えます。そしてSTEP3で「すべてのデスクとすべての家庭にコンピューターを」という言葉か、あるいは「パーソナルコンピューター」という言葉を考えます。最後、STEP4では、これを実現するためにすべきことを計画します。チップを最小化するにはどうしたらいいか、などです。このように、STEP3が決まることによって、そこから逆算してSTEP4が自ずと出てくるのです。

 

自分でビジネスを始めるときや、新規事業を組み立てるときには、これらの4つのステップを必ずやってみてください。

 

 

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◆講師プロフィール
各務 太郎(株式会社SEN代表・建築家・コピーライター)
早稲田大学理工学部建築学科卒業後、電通入社。コピーライター/CMプランナーとして数々のCM企画を担当。電通を退社後、2017年ハーバード大学デザイン大学院都市デザイン学修士課程修了。第30回読売広告大賞最優秀賞。第4回大東建託主催賃貸住宅コンペ受賞。他多数。

 

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