今日は「人と組織を強くする」という話ですが、組織も同じです。本当に組織力を高めたかったら、組織の中に破壊を起こさなければいけないんです。
よくスポーツのストーリーでも雨降って地固まるではないですが「あの試合を機にみんなが言い合えるようになり、チームが一致団結した」ということがありますね。
破壊と超回復理論からいくと、それを経ないと、絶対いい組織になりません。私も組織論を扱っていますが、今危険だと思うのは「心理的安全性」が流行って、破壊が起きずに、緩い組織になってしまうことです。
Googleで行われている「心理的安全性」はそもそも「High Expectation & Demand」と呼ばれるような、高い期待と要求がある上でなんでも言い合うというものです。だから、日本でいう心理的安全性とは全く異なりますね。
ここにいる皆さんはハードワークをして、破壊を起こしているかもしれませんが、ご自身の破壊と超回復を考えてみてください。
私もいろいろなスポーツを経験してきましたが、みなさんこの数字「7-119」を知っていますか。これは2012年U20日本対ウェールズでのスコアです。子ども対大人みたいで、ウェールズの人には叩かれ、笑われました。
この日、ウェールズのホテルに帰って、10時すぎくらいにミーティングをして、一人一人に試合の感想を書かせ、コメントさせたんです。「どう思う?」「今どんな気持ち?」って。
みんな下を向いて「最悪でした」「恥ずかしかったです」とか、みんなさらけ出したんです。そこで「いや、そもそも俺たちはここに何しに来たの?」「一ヶ月後のアメリカでの試合の強化遠征のために、来たんだよね」「じゃあ、今日の試合の、みんなにとっての意味は何?」というのを3回繰り返しました。
そしたら、一人のリーダーが「確かに俺たちは日本代表に選ばれたけど、ウェールズは全くレベルが違ってパニックになった。でもアメリカに行く前に、自分たちを知ることができてよかった」と言ったのを発端に、そこからどんどんみんながポジティブになって、ミーティングを終えたんです。その後も、様々なメディアから誹謗中傷がきたんですが、それを断ち切ってチームを作ることができました。
ではみなさん、普段どれくらい自分に「破壊」と「超回復」を起こしているか、どれくらい意識しているか考えてみてください。ついつい我々は破壊するよりも、何もないようにいった方が幸せに感じますが、是非両方を意識してくださいね。
結構ストイックな方は破壊ばかりしますが、全然超回復の栄養と休養を与えられていない。破壊ばかりしても、筋破壊と筋断裂が起こるだけなので、きちんと超回復を起こすための栄養と休養の両方が必要です。
自分にとっての栄養と休養をきちんと何か考えずに、他者がやっていることをそのままやっても超回復が起こらないのでハッピーにはなれません。このサイクルで、自分の中にしかないものを意識してみてください。
受講生:「筋トレで、筋肉の破壊と超回復はずっと経験してきてわかるんですけど、例えばこれが精神力や知力の場合は破壊の負荷をたくさんかけた分、それだけ超回復として多くの回復の時間を当てた方がいいのでしょうか」
もちろん、筋肉と違って、知力や精神力は見えない部分なのでそれは探求しないといけないですね。
つらいことがあってご褒美をあげるということでも、ご褒美をあげすぎると「破壊」を忘れるかもしれない。ご褒美が少なすぎると、全然回復せずにすぐメンタルがやられるかもしれない。この塩梅を自分で見極めるのが大事です。
そのときに大事な学びのポイントは、振り返ることです。振り返らないと忘れて、同じ失敗を繰り返すことになる。
破壊と超回復のパターンをずっと失敗し続ける人は、振り返っていない。破壊と超回復の栄養と休養のパターンを見誤っている。メンタルとか知力は本当に個人差が大きいので、振り返りながら自分にとって適切なパターンを試していくことが大事です。